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土佐の森・文芸 融通無碍
[関連話]
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◆明治の新政府

明治の新政府は若い人が暗中模索で組み立てた。
新政府は旧幕の体質を温存したままの侍型の構造だった。生みの苦しみは続いている。
幕府を倒すという目的で、一致して行動したが、倒してみると、幕府制度の偉大さ精緻さに驚き、これからの自分たちの時代をどう組み立てていくか、暗中模索していた。
新時代を迎えて、新政府中枢には経験も知識も徹底的に不足しており諸局面で朝令暮改のような愚策を連発する。
戊辰戦争の混乱期、官軍勢力の一部は年貢半減を行く先々で約束して、庶民の圧倒的支持を得た。これは事前承諾を得ていたが、結局は「偽官軍」として処断された。
「おい、話が違うぞ」と遺恨を残して消えた人々。
江戸庶民は幕府ひいきが多いから、明治という新元号を『明治というが逆さから読めば治まるめえ(めえ→めい=明)じゃねえか』と揶揄した。
人は昔を懐かしみ新しいものを拒否する傾向がある。新しいものを受け容れるには過去を否定するか、自分を変質させる必要がある。時間をかけて確立した自己を短時間に改革していくことは難作業である。下手をすれば自己崩壊が起きる。
旧幕を懐かしむ動きも市民のあいだに顕在化しつつある。壊してみれば『昔の徳川いまは恋しき』。
270年続いた徳川の武家政治はその時々で改革され、米本位制と身分制度という基本柱は維持したが、幕府が江戸に開府以降、商業資本の台頭は幕府を悩ませ続けた。
天候不順で頻発する飢饉は庶民の不満を募らせ、一揆も各地に起る。
外国に門戸を開放以来、見たことも聞いたこともない流行病<はやりやまい>が列島に蔓延した。
外国と比べ銀の価値が高かったから、鎖国を解き通商が公認されると、堰を切ったように諸外国は日本に銀を持ち込み、金と交換し自国に持ち去る。少なくなった金は高騰し、だぶつく銀は暴落する。
経済の混乱は政治に改革を迫るが幕閣に知恵はない。ない訳ではないのだが逡巡して、対策は後手後手にまわり庶民の不満は爆発寸前。幕府も諸藩も有効策を見出せないまま幕末期を迎えた。
このありさまは、新時代の到来を確実に予想させるが、未来像の輪郭はまだ見えない。
日本の国の成り立ちを理解するため、歴史を見直そうという動きの中で「天皇が親政していたころは良かった、仏教が伝来して以来、この国の伝統が失われたのだ」と考える風潮・思想が生まれる。
時代錯誤のような懐旧が国を覆う。言いようのない不安が、閉塞感が充満している。
外国船が頻繁に日本近海に出没し民心の不安を増幅させる。薩長は欧米勢力に挑戦したが陸からの砲撃は欧米の軍艦からの猛烈な反撃を受けて沈黙し、上陸され、占拠された。

英国海軍陸戦隊によって占拠された長府の前田砲台。
馬関戦争(NHK動画)内憂外患の挙げ句、幕府が倒され否幕府は自壊した。
徳川の終焉(融通無碍/関連話)幕末の志士像/徳川の世と新時代(融通無碍/第10話)この時代新政府首脳たちは政府公人でありながら、出身藩の幹部でもあったから悩みは大きい。かれらは新しい『政府という小舟』と古い『幕藩体制をそっくり真似た母藩の古舟』に片足ずつ乗せ、その平衡を取るのに苦労していた。
倒幕という共通目的で集まったが、その実態は烏合の衆だ。 新政府中枢は「てんでばらばら」で、時代認識も描く理想像もまちまちだ。 潰れかかった中小企業の集合体が再建策を決定する。だがその集合体である新政府の運営には諸藩の供出した人材が分担している。大まかな合意らしきものはあるが、細部は煮詰まっていないから同床異夢の場面が続出する。
新政府首脳はその個人の性癖に加え、出身藩の伝統も引きずっている。薩摩の血を色濃く残ながら政府首脳として公務を果たす。長州も土佐も同様だ。
同床異夢は微妙な対立を生み、ギクシャク感が政府内に充満する。
薩摩・西郷などは早々に不平を鳴らし辞官、鹿児島に去った。(
板垣退助、
江藤新平も去った。)

元来寡黙な性格で、深い穴から呟くようにその意をもらすことが多く、口を開けばその言には信があり、行動すれば必ず結果を残すという不言実行型の人であった。眼で語る人物だから、口角泡を飛ばす理屈屋の多い長州人とは肌合いがよろしくない。
西郷は『言わぬとも分かる。分からぬ連中には言っても無駄だ』あるいは『言う者は知らず、知る者は言わず』とばかりに仏頂面をおし通す。
西郷どん(NHK大河ドラマ)板垣退助(幕末足軽物語・融通無碍/人物評伝)江藤新平(幕末足軽物語/人物評伝)~~~~~~~~~~~
【薩長土との付き合い方】
明治初期巷間に流布した逸話がある。
○薩摩には女
○土佐には酒
○長州には金
利権ねらいの政商たちが要路にある政府要人の歓心を得るために用いる手。その出所は不明だし、中身が妥当であるかは分からぬ。
この逸話は男という生き物の生理と生態を端的に言い表す。その是非を論ずるのは止めよう。
男とは、げに始末の悪い生き物だ。

鹿鳴館
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元高知県知事橋本大二郎氏
南寿吉先生の遺作(高知新聞/2021.7.2)2021.10.01.23.55