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土佐の森・文芸 融通無碍
津野川の見渡し地蔵
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<令和7年10月5日発信>
【第56話】

高知県四万十市西土佐/津野川は四万十本流と伊予領から流れて来る支流・吉田川の交わる所。
上流に大宮という集落がある。往時はもっと栄えていた可能性がある。今はごく寒村だが。
この津野川にあるお地蔵様(見渡し地蔵)は川を渡る人々の安全を祈願して立てられた。見渡し地蔵は左右両岸に二体あることが多い。

津野川には今、立派な橋が架かる。「津大大橋」だ。橋名の由来は津野川と大宮を結ぶから。
不思議なことに橋は昔の渡し場のあった箇所に架かることが多い。だから架橋点の辺りを注意深く探すと水難防止祈願の「見渡し地蔵」が見つかる。
架橋工事で一旦は移動させられるが元の場所に舞い戻る。その余地がない場合は若干離れた位置に安置してある。不思議だ。
渡し場が橋に替わる際「どこがここら辺で一番安全か」を検討すると「そりゃ、元の渡し場の所だ。川の流れが変わった訳じゃなし」。だから昔の渡しがなくなっても今の橋はその位置にある。
過去をしっかり生かして今がある。水上安全の願いは受け継がれる。水難を避けたい人の心は祈りの仏像を求める。
津野川は春先、川の実態を見る好ポイントでもある。
農耕が始まると田に泥が発生し小川に流れ込む。
農業の盛んな吉田川流域はこれらの泥水が川に流入する。合流点・津野川で四万十本流と交わり見事なコントラスト、薄い濁水と清流(要するに本流域では農業が衰退?)の融合だ。
地元では「笹濁り」と呼び、春を感じる風景。
吉野川上流の嶺北でも同じような光景を処々に見る。

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津野川は、笹山久三の「四万十川・あつよしの夏」の舞台になったところです。
四万十川・あつよしの夏◆四万十川 あつよしの夏
四万十川の大自然の中、貧しくも温かな家族に見守られて育つ少年あつよし。
その夏、彼は子猫の生命を救い、同級の女の子をいじめから守るためにたちあがった……
みずみずしい抒情の中に人間の絆を問いかえした感動の名作。
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